「マネー」にアンカリングされてしまった「幸せ」


アンカーを皆、持っているということは、収入と財産に関する「アンカー」も持っていることになります。



これまで「安定」の時代が長かったため、サラリーマンであるならば、企業規模や年齢によって、ある程度期待される収入が見えていたと思います。その期待される収入金額にアンカリングされていたことでしょう。



そこでリストラ、給料の減額がされると、強い抵抗感を覚えてしまうのです。つまり、「認知的不協和(*)」が起こり、起きている事態は間違っている、と感情の中で修正しようとします。



(*)認知的不協和とは、ヒトの精神状態の中で、自分が正しいと思っていることと、実際に自分が行動していることに相違があったとき、いやな気分になること。そして、この状態に陥るとヒトは、これを打ち消そうとしたり、和らげようとしたりする。




「こんなに一生懸命働いているのに給料を減らすのは、会社がおかしい」



「誰々より優秀な自分をリストラするなんて、おかしい」



「不況にした政府の政策が悪い」



などと、会社や社会のせいにし、「自己を正当化」しようとするのです。



このような精神状態では、冷静に、状況を判断し、正しい行動を取りようがありません。



 もしかしたら、もっとやりがいのある仕事に転職しようと考えることもできたかもしれないし、変化を恐れて、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、会社にへばりつこうと決心できたかもしれません。



しかし、不況を理由にリストラされたために、先程のような精神状態に陥ってしまい、この機会をチャンスだと捉えることができないのです。



自分では見切りがつけられなかったことを、環境がそうさせてくれたと思えたら、随分世の中が違って見えてくるのですけどねー。



 こうした気持ちの切り替えができない理由は、どうしてなのでしょうか?



 私は、「マネー至上主義」の考え方が浸透してしまったことにあると思っています。つまり、「マネー(お金)」=「幸せ」となってしまっているので、「マネー」を失うかもしれないという恐れと、「幸せ」までをも失ってしまうのではないかという恐れとを混同してしまうことから起きているのではないかと思います。

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