2007年10月24日水曜日

英国に倣った処し方

前回、英国は1986年まで経常収支は黒字を維持してきたと
書きましたが、それは貿易収支の赤字を埋めて余りある所得収支
に支えられていたということなのです。要は、過去に積上げてき
た、世界中にある資産からの利子・配当収入が莫大にあったとい
うことなのです。


 一方、アメリカは対外純資産が最大になってから、たった4年
でその資産を食いつぶしてしまったのです。そして、国際収支発
展段階でいうところの第一段階-未成熟債務国という段階に戻っ
たにもかかわらず、世界経済の中心としてその地位を維持し続け
ています。それはとりもなおさず、基軸通貨国という地位を利用
した、アメリカの戦略的なマネー構想が功を奏しているからなの
です。


 日本という国を考えた場合、アメリカの真似ができるでしょう
か。絶対できないとは申し上げたくはありません。しかし、日本
の国際的政治力や総合的な国力を考えると、アメリカの真似をし
て背伸びをするよりも、同じような境遇を100年先に経験して、
なお繁栄している英国を倣う方が、より現実的でうまくいくと思
います。


 では、何を倣ったらよいか。日本は幸いなことに未成熟債権国
というもっとも元気のよい国の状態にあり、貿易収支も漸減傾向
にはありますがまだまだ巨額で国富を積上げています。その黒字
を、世界の良質な資産の購入に充て、将来に備えるというのが最
善の方法だと思います。


 その際の投資の仕方として、


①世界中に分散投資を行う(国際分散投資

②エマージング・カントリー(新興工業国)に投資する

③戦略的投資先に重点投資を行う

ということを忠実に守ることです。


 ①の世界中に分散投資を行うということは、リスクの分散とい
う意味で最も重要なことです。現在はアメリカ偏重で、貿易で稼
いだドルを米国債の大量購入にあてることで、ドルの買い支え役
に回され、アメリカの目論むマネー循環にはまってしまっていま
す。そして、せっかく積上げた資産をドルで持っているがために、
ドルの下落により棒引きされるというパターンを繰り返していま
す。まず、この循環から解き放たれ、国際分散ができる投資割合
に変えることです。


 まず、国として行うことは、外貨準備のドル偏重をやめ、バラ
ンスの取れた割合に変えることが急務です。中国ですら人民元切
り利上げに際し、通貨バスケット構想を発表し、ドル準備の割合
を減らそうとしています。欧州各国は元々、金(きん)による準
備が多く、ドルに偏重していません。アラブ諸国は、原油決済を
ドルからユーロへと変えようという機運が起きています(イラク
のフセイン元大統領がこの動きをしたことも、アメリカの逆鱗に
触れた要因の一つです)。


 ②のエマージング・カントリーに投資するということですが、
公的年金が危機に陥っている今、ある程度のリスクを覚悟の上で
高利回りの投資物件への投資をする必要があります。先進国の経
済成長は数パーセントしか期待できませんから、十分な利回りを
確保しまければ、年金不足に対応できないからです。


 英国も、積極的にエマージング・カントリーに投資してきまし
た。当時のエマージング・カントリーであるアメリカ、植民地で
あったインド、オーストラリア、南アフリカなどに投資してきた
のです。


 ③の戦略的な投資先に重点投資するということは、上記にも通
じます。ドイツなどの新興国が欧州市場を席巻し始めたため、仕
方なかった面はありますが、英国は言語も文化も共通基盤を持つ
植民地支配を強め、経済的に同体化させていったのです。


 現在のユーロ圏にしても、共通のキリスト教文化圏という基盤
を元に、経済統合を果たし、共通通貨圏を成立させたことで、投
資が促進しています。


 翻って日本を考えた場合、アジアという地域に注目すべき事は
周知のことと思います。もちろん、アジアという国は人種、言語、
文化すべてのものが多種多様であり、まとめあげるには大変難題
が多いことは事実です。


 また、かつての戦争により日本を信用できないという風土も根
強くあります。日本人も戦争アレルギーから極度の臆病になって
いるということも否めません。


 しかし、だからこそ、お互いに経済発展できる基盤を作ってい
かなければならないと思います。まずは、投資という形でアジア
各国の経済発展に寄与すると共に、我々日本人はアジアの理解と
投資先からの果実という2つを手に入れていくという態度が望ま
れるし、それはもう最重要な急務となっています。



 ここまでは、日本を取り巻く経済環境と先人である英国、アメ
リカの歩みをみると同時に、日本が今後取るべき道を模索してき
ましたが、次章以降は、日本人個人として、どのように生きてい
ったらよいかを考えていきます。