インフレ襲来!
でも、低成長はわかるけど、高インフレは考えにくいという方がいる
かもしれません。そこで、インフレが起こりうる理由を説明しましょう。
インフレの起こる原因には大別して2種類あります。一つは需要に供
給が追いつかないボトルネック型で、もう一つは原材料費などの値上が
りが製品に転嫁されるコストプッシュ型があります。
現在のデフレは、一つ目の逆で、供給に対して需要が少ないために起
きるデフレで、特に、土地や建物などの資産に対するデフレ(資産デフ
レ)の状況です。その結果として、国、企業、個人すべてのプレーヤー
のバランスシートが異常になっているので、バランスシート・デフレ、
バランスシート不況などとも言われています。
バランスシートの異常とは、簿記や会計の知識がないとわかりにくい
かもしれませんが、会計上、資産=負債+資本という式が成り立ちます。
左辺(懐かしいことばでしょう)の土地や建物などの資産の価値がデフ
レで減少すると、右辺も減少しなければなりませんが、銀行借入などの
借金である負債はデフレだろうと減りません。そうすると、おのずと資
本が減ることになります。資本が減るということは、取りも直さず自分
の持分が減るということです。だから、みんな苦しかったのです。
このバランスシートの異常を15年かけて、大分修復できてきました。
大企業や大銀行まで倒産するという事態を招き、全メガバンクに公的資
金を注入するなどの措置がとられたことも記憶に新しいところだと思い
ます。
この資産デフレが終焉して、すぐに資産インフレが起きるかというと、
そんなに事は単純ではないと思います。この15年でこれだけ痛い目に
遭ったのですから、皆がこぞって不動産の投機に走るとは思えません。
確かに、東京の公示時価が下げ止まったということがニュースになり
ましたが、これはJ-リートの影響がほとんどでしょう。J-リートが
乱発的に設定され、先発のリートにほとんどの優良物件は買い尽くされ、
お金が入ってくるから無理に買い漁っているというのが現状です。
まさに、ミニバブルです。「え、全体としてはマイナスなのに、もう
バブル!?」という声が聞こえそうです。不動産価格をグラフにしたら
水準はまだマイナスですが、小さなヤマができていることが見て取れる
でしょう。これが、バブルです。
既にアメリカのリートは天井をつけましたが(2005年7月現在)、
その後資金がジャブジャブの中、問題となったサブプライムローンによ
る住宅価格押し上げ相場が始まり、米国住宅価格はまさにバブル化の様
相を呈していました。今回のサブプライムローン問題により、しばらく
低迷することを余儀なくされそうですね。
同様に、日本の不動産も厳しい状況となるでしょう。下落に転じる時
期は早いかもしれません。これまでの上昇も全国的な拡がりというより
は、局地的な上昇ということが先日の公示地価の発表でわかります。す
なわち、リートなどの不動産ファンドの購入による上昇に過ぎないの
です。そして、リートも、米国のサブプラムローン同様のことになる可
能性があります。
それは、リートの特性にあります。リートは、金利上昇には滅法弱い
のです。経済が弱く低金利の時代は、債券からリートへの投資が増えま
す。しかし、金利が上昇してくると、経済はブレーキをかけられるリス
クが高まり、いずれ不動産も下落に転じると考えられます。一方、債券
は十分高い利回りになってくるので、利の乗ったリートを売却して、債
券に乗り換える動きが出るのです。
更に、J-リートは金利上昇に特に弱みを持っています。それは、投
資資金の半分近くが借金によって賄われているからです。金利が上昇し
たら、ひとたまりもありません。
金利上昇なんて当分ありえないと思っている人が大半でしょう。確か
に、数パーセント上がるような金利上昇は現時点ではなかなか起こらな
いでしょう。日銀は、金利正常化に執念を燃やしていますが、政治サイ
ドからの圧迫により思うようにいきません。また責任転嫁のため、利上
げの基準を明確にしたため自分で手足を縛ってしまいました。ようやく
機が熟したと思った矢先、サブプライムローン問題での世界市場混乱が
起きてしまいました。利上げは再び遠のいてしまったでしょう。
しかし、プロたちは金利を水準では見ません。方向で見るのです。こ
の方向感が上を目指しただけで、大きな資金移動が起こり、金融商品の
価格形成に大きな影響を与えるのです。
金利が上昇に転じれば、J-リートは遅かれ早かれ、下落に転じるで
しょう。日本の場合は、その下落に起因して、不動産価格も下落に転じ
るでしょう。なぜなら、日本の不動産価格はJ-リートに支えられてい
るといっても過言ではないからです。
長期的に考えた場合でも、人口が減少していく国の不動産価格が上昇
するでしょうか。家、オフィスの需要は確実に減っていくのですから、
価格は上がりようがありません。
では、インフレになるのか、という疑問が生じることでしょう。その
疑問には、イエス、と答えます。
前述したインフレの原因の二つ目で、コストプッシュ・インフレが起
こる可能性が高いのです。最近でも、原油を初めとした資源高によって、
徐々にその傾向が見て取れます。資源高がどこまで続くかはわかりませ
んが、資源高には限界があります。なぜなら、資源高の影響で資源を使
った製品価格が上がりすぎることによって、世界経済全体が萎縮し、資
源への需要が減り、価格は下落に向かうからです。だから、資源高自体
は、そんなに心配しなくてもいいのです。
特に日本では進んでいますが、省エネ経済化が主要国では進行してお
り、資源高の影響も限定的になってきています。
では、高インフレは起きないのかというと、そうではありません。
英国でもそうでしたが、国力が落ちてくると通貨安に見舞われます。
私の子供の頃は、固定相場時代ですが、1スターリング・ポンド(英ポ
ンドのこと)は800円もしたのです。変動相場制になって、通貨価値
が正しく反映されるようになると、まさに急落、ドル円の比ではありま
せんでした。
翻って現在の日本を考えてみると、国家財政は火の車で、格付は先進
国中最低ランクになっています。1ドル100円から120円の範囲に
収まっているのは、奇跡的としか思えません。その要因は、日本の経済
力と国民の持っている資産なのです。
今後20年の間には、1ドル200円程度になっていても、何ら不思
議ではないのです。
かもしれません。そこで、インフレが起こりうる理由を説明しましょう。
インフレの起こる原因には大別して2種類あります。一つは需要に供
給が追いつかないボトルネック型で、もう一つは原材料費などの値上が
りが製品に転嫁されるコストプッシュ型があります。
現在のデフレは、一つ目の逆で、供給に対して需要が少ないために起
きるデフレで、特に、土地や建物などの資産に対するデフレ(資産デフ
レ)の状況です。その結果として、国、企業、個人すべてのプレーヤー
のバランスシートが異常になっているので、バランスシート・デフレ、
バランスシート不況などとも言われています。
バランスシートの異常とは、簿記や会計の知識がないとわかりにくい
かもしれませんが、会計上、資産=負債+資本という式が成り立ちます。
左辺(懐かしいことばでしょう)の土地や建物などの資産の価値がデフ
レで減少すると、右辺も減少しなければなりませんが、銀行借入などの
借金である負債はデフレだろうと減りません。そうすると、おのずと資
本が減ることになります。資本が減るということは、取りも直さず自分
の持分が減るということです。だから、みんな苦しかったのです。
このバランスシートの異常を15年かけて、大分修復できてきました。
大企業や大銀行まで倒産するという事態を招き、全メガバンクに公的資
金を注入するなどの措置がとられたことも記憶に新しいところだと思い
ます。
この資産デフレが終焉して、すぐに資産インフレが起きるかというと、
そんなに事は単純ではないと思います。この15年でこれだけ痛い目に
遭ったのですから、皆がこぞって不動産の投機に走るとは思えません。
確かに、東京の公示時価が下げ止まったということがニュースになり
ましたが、これはJ-リートの影響がほとんどでしょう。J-リートが
乱発的に設定され、先発のリートにほとんどの優良物件は買い尽くされ、
お金が入ってくるから無理に買い漁っているというのが現状です。
まさに、ミニバブルです。「え、全体としてはマイナスなのに、もう
バブル!?」という声が聞こえそうです。不動産価格をグラフにしたら
水準はまだマイナスですが、小さなヤマができていることが見て取れる
でしょう。これが、バブルです。
既にアメリカのリートは天井をつけましたが(2005年7月現在)、
その後資金がジャブジャブの中、問題となったサブプライムローンによ
る住宅価格押し上げ相場が始まり、米国住宅価格はまさにバブル化の様
相を呈していました。今回のサブプライムローン問題により、しばらく
低迷することを余儀なくされそうですね。
同様に、日本の不動産も厳しい状況となるでしょう。下落に転じる時
期は早いかもしれません。これまでの上昇も全国的な拡がりというより
は、局地的な上昇ということが先日の公示地価の発表でわかります。す
なわち、リートなどの不動産ファンドの購入による上昇に過ぎないの
です。そして、リートも、米国のサブプラムローン同様のことになる可
能性があります。
それは、リートの特性にあります。リートは、金利上昇には滅法弱い
のです。経済が弱く低金利の時代は、債券からリートへの投資が増えま
す。しかし、金利が上昇してくると、経済はブレーキをかけられるリス
クが高まり、いずれ不動産も下落に転じると考えられます。一方、債券
は十分高い利回りになってくるので、利の乗ったリートを売却して、債
券に乗り換える動きが出るのです。
更に、J-リートは金利上昇に特に弱みを持っています。それは、投
資資金の半分近くが借金によって賄われているからです。金利が上昇し
たら、ひとたまりもありません。
金利上昇なんて当分ありえないと思っている人が大半でしょう。確か
に、数パーセント上がるような金利上昇は現時点ではなかなか起こらな
いでしょう。日銀は、金利正常化に執念を燃やしていますが、政治サイ
ドからの圧迫により思うようにいきません。また責任転嫁のため、利上
げの基準を明確にしたため自分で手足を縛ってしまいました。ようやく
機が熟したと思った矢先、サブプライムローン問題での世界市場混乱が
起きてしまいました。利上げは再び遠のいてしまったでしょう。
しかし、プロたちは金利を水準では見ません。方向で見るのです。こ
の方向感が上を目指しただけで、大きな資金移動が起こり、金融商品の
価格形成に大きな影響を与えるのです。
金利が上昇に転じれば、J-リートは遅かれ早かれ、下落に転じるで
しょう。日本の場合は、その下落に起因して、不動産価格も下落に転じ
るでしょう。なぜなら、日本の不動産価格はJ-リートに支えられてい
るといっても過言ではないからです。
長期的に考えた場合でも、人口が減少していく国の不動産価格が上昇
するでしょうか。家、オフィスの需要は確実に減っていくのですから、
価格は上がりようがありません。
では、インフレになるのか、という疑問が生じることでしょう。その
疑問には、イエス、と答えます。
前述したインフレの原因の二つ目で、コストプッシュ・インフレが起
こる可能性が高いのです。最近でも、原油を初めとした資源高によって、
徐々にその傾向が見て取れます。資源高がどこまで続くかはわかりませ
んが、資源高には限界があります。なぜなら、資源高の影響で資源を使
った製品価格が上がりすぎることによって、世界経済全体が萎縮し、資
源への需要が減り、価格は下落に向かうからです。だから、資源高自体
は、そんなに心配しなくてもいいのです。
特に日本では進んでいますが、省エネ経済化が主要国では進行してお
り、資源高の影響も限定的になってきています。
では、高インフレは起きないのかというと、そうではありません。
英国でもそうでしたが、国力が落ちてくると通貨安に見舞われます。
私の子供の頃は、固定相場時代ですが、1スターリング・ポンド(英ポ
ンドのこと)は800円もしたのです。変動相場制になって、通貨価値
が正しく反映されるようになると、まさに急落、ドル円の比ではありま
せんでした。
翻って現在の日本を考えてみると、国家財政は火の車で、格付は先進
国中最低ランクになっています。1ドル100円から120円の範囲に
収まっているのは、奇跡的としか思えません。その要因は、日本の経済
力と国民の持っている資産なのです。
今後20年の間には、1ドル200円程度になっていても、何ら不思
議ではないのです。
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